Revitのツールの話じゃなくてもっと広いBIMの話です。
コロナでヒマしている間にCGを少し覚えようと思ったのですがCG用語にLODという単語が出てきたらつい脱線して・・・重要な概念なので記事にしてみました。
2020/05/09に書き上げたのですが、もし内容に「現状とちょっと違うよ!」的な部分などありましたらどうかご一報ください('◇')ゞ
長々と書いていますが、ほとんどアメリカの話です。
intoroduction
皆さんご存じのようにBIMモデルは、3次元の形状に性能や価格など様々な情報を盛り込むことができるデジタルモデルです。
突然ですが質問です
モデルは正確かつ沢山の情報が盛り込まれていれば100点なのでしょうか?
答えはNO!です
設計のフェーズやモデルの利用目的などモデルの置かれた状況によりモデルに求められる情報の密度は変わっていきます。
例えば、設計の初期段階は流動的なので建具に材質や小窓の有無、細かなサイズの調整などの情報を入れ込むことは余計な情報となりかえって邪魔になります。
設計が進むにつれて徐々に材質や形状、性能、配置位置など沢山の確定した情報を盛り込む事が求められるようになります。
施工までの間にモリモリ盛り込んだ情報ですが、建物の維持管理の段階になると詳細にモデリングした形状は不要になります。
モデルに入れ込む情報量はフェーズに応じた対応をしなければなりません。
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出典 BIMナビ |
ここで再び質問です!
下図のモデルのデータは正しく入力されていますか?
答えは、そんなの知るかよ!です 笑
BIMモデルは様々な状況に応じたデータが作れますが、肝心のモデルの何が正しい状態で、何が仮に置かれている状態なのかを精査することは、とても困難です。
仮に「通り芯は正確に入力されているが、壁厚は正しく入力されていない」といったルールでもモデルをチラ見しただけでは全然分からないと思います。
しかし一度でもモデルに携わってしまったら、そこからは自分もモデル管理者のメンバーとして扱われ、たとえ全く触っていない箇所だとしても「ここなんでこうなってるの?」とあらゆる場面で犯人捜しの容疑者の一人に挙げられてしまいます・・・あるあるじゃないですか?
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何が正しいのか分からな~い
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LODはモデルに盛り込む情報の量と、情報の質(信頼度)を定義しているので、そこに責任の所在を加えれば前述した質問の内容が管理できます。
あ、でも自動的にどうにかなるものじゃなくて手動です!
マンパワーです!!
↓↓ここからようやくLODの解説がはじまります↓↓
LODをざっくり解説
LODは、BIMモデルの入力状態を、部位ごとに6段階ずつに分けて定義したものです。
使い方は、モデルを入力する前にリーダーがスタッフに「じゃ~基本設計の壁のLODは200で入力して」と指示を出し、スタッフは
BFLodS(LODの仕様書)を見て指示されたLODの基準に到達するモデルを作成します。スタッフが「壁できました」と言ったらそれは「LOD200に準じた壁ができた」という事を意味する事になります。
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【重要】LODはモデルの共通言語の定義 |
他部署からもらったモデルも「壁のLODは200で入力済です!」と言われたら、
BFLodSの壁のLOD200と照らし合わせれば壁の入力の進捗状況や壁に入れ込んだ情報の何が正しくて何が仮のモノなのかが理解できます。
この仕組みはアメリカでは業界標準として使われていますが、日本にはまだ業界標準として使えるLODを定義したものがありません。そのため日本のLODは業界標準ではなく企業がBFLodSを参照して独自にアレンジした方法で利用してるのが現状なようです。(20/05/05)
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日本はどうするのかしら |
もう少し詳しく解説
唐突ですが、オリンピックの陸上5000mに出場するには一定の基準を満たしていなければなりません。
同様に、壁がLOD350を満たしているという場合には、LOD350で決めている基準を満たしていなければなりません。
基準にするものは①進捗②形状③属性④PMの4つで、これら全てを満たしてはじめてLOD○○が名乗れます。
①~③はLOD(
BFLodS)で既に定義されていること。
④は誰が、またはどの部署が入力したか(責任の所在)なので案件ごとに決めること。
詳しくは下記URLの平野陽氏の論文を参照してください。LODについて知るにはすごくお勧めです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijt/24/56/24_333/_pdf
LODと設計フェーズ
計画、設計、施工、維持管理などの設計のフェーズとモデルのLODは分離して考えます。
なぜならば設計のフェーズで表現したい事は、個々の内容が必ずしも同じLODの状態にならないからです。
例えば、実施設計用のモデリングでは、壁や床は正確なサイズで入力したいので「LOD350」とするが給排水は「LOD200」にして簡素なモデリングに留めるといった事が起こり、モデル内に異なるLODが混在することになります。
LODと設計フェーズの管理
前述したように設計フェーズとモデルのLODの関係は1対1の関係にはなりません。また、誰がそのモデルを入力したのかも確認する術がありません。
そこで管理方法のひとつとして米国建築家協会(AIA)は両者の関係を管理する管理表(モデルエレメントテーブル)を推奨しています。
上記の表はBIM FORUMのパートⅡより原本がDLできます。
上記の表を日本仕様にアレンジしたサンプルをBIMナビのサイトが掲載していました。
モデルの詳細度が上がる≠LODが高い1
LODが上がるとモデリングの詳細度も上がる傾向がありますが必ずしもそうとは限りません。例えば、コンポーネントが非常に詳細かつ具体的に作られていても、モデルにはLOD200と記述ができます。
LODは、モデルが詳細でも「設計がまだ流動的な段階で位置や仕様が変更される場合もあるよ」といった図面に対する信頼度の警告にも使えるということです。
モデルの詳細度が上がる≠LODが高い2
LOD500は400迄と少し違う領域です。400までは「作るため」ですが、500は完成したものを「運用、管理、操作」のためのモデルになるので求められるもが違ってきます。
HISTORY
2004年にVico Software社(当時はGraphisoftの一部門)はBIMモデル内の情報管理にMPSという「
Level of Detail(詳細レベル)」の定義(最低レベルの形状から完成形までの情報の量を5つのレベルに分けた)を中心としたシステムを導入しました。
2008年には複数の団体が同様のコンセプトを採用しましたが、その中で米国建築家協会(AIA)は内容をBIMプロジェクト全体で利用できる「
Level of Development(開発レベル)」へと発展させていました。
※日本語に翻訳すると”開発”となるようですが、開発って言われてもちょっとピンと来ないなと思っていたら「ある進捗状況における部位ごとの確かさ」と訳しているサイトがありました。なるほど💙
LODのD
BIMで「LOD」と言えば「Level of
Development」の略語ですが、「Level of
Detail」の略語としても使われています。
両者の内容にはハッキリとした違いがありますがLODの黎明期に両者が入り乱れていた関係でLODは「Level of
DetailまたはLevel of
Developmentの略語です」と併記して紹介される事があります。
現在は、LODと言えばLevel of
Developmentを意味する事が主流で、ここでの説明もLevel of Developmentの説明になります。
2つのLODの違い
- Level of Detailは、モデルの見た目の詳細度を表しています。Revitのツール「簡略、標準、詳細」をイメージしていただけるといいかと思います。
- Level of Developmentは、モデルの見た目の詳細度だけではなく、メーカーや価格などの説明データを盛り込んだりモデル情報の正確さの保証まで可能にます。
例)LOD100のドアの位置は正確でない。
LOD350のドアの位置は正確である。
➡LODには位置情報が正確か否かの定義もありますwow
BIM Forum LOD Specification(BFLodS)
米国建築家協会(AIA)により発展したLODの概念を新たに解釈し直し解説したものがBIM Forumの発行するLODでBFLodSと表記されたりします。
BFLodSはLODの国際的な標準となっています。
無料でDLできるので是非一読してみてください。
BFLodSの中
Uniformatで分類された部位を更に6段階に分けたひとつひとつのレベルに対する定義を、文書と二次元や三次元で描かれた具体例で明示してます。
BFLodSとUniformat
BFLodSでLODを定義する時の分類はUniformatにより行われます。Uniformatは建築物を外壁、屋根、床などのように部位別に分類する分類体系なので日本の実情とは合わない部分があり残念です。
アメリカで使うために作られたものなので文句は言えませんが....(>_<)
BIM→LOD→Uniformat→Revit→...どんどん繋がっていく感じがしますが、これはアメリカの話・・くわばらくわばら
業界標準
アメリカではLODは業界標準として整備されているので、データの自己管理だけではなく、LODがある事で同業他職種間での意志の疎通が混乱することなく行えます。
業界標準である事の一例として...
下記は、アメリカのとあるBIMモデル作成会社の申し込みフォームです。「Level of Development」をプルダウンして依頼するBIMモデルのLODのレベルを入力することが必須となっています。
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選択項目 |
BFLodSの仕様をそのまま日本で使えるのかというと少し無理がありそうな気がします。
だからといって今はまだ国や協会がまとめた日本独自のLODの指標もありません。仮に上記のような申し込みフォームをA社とB社で作成して依頼主がLODのレベルを選択した場合にA社、B社、依頼主それぞれの認識の間に差異が生じてしまう可能性があります。(2020/05/05)
異業種とのからみ
アメリカの話シリーズ
米国一般サービス管理局の不動産サービスによる承認済みマトリックス
in Japan
我らが日本も少しづつ前に進んでいます!GO!GO!
BIMガイドライン(国交省が平成30年に策定)
基本設計方針策定時、基本設計図書作成時、実施設計図書作成時という3つに設計フェーズを分け、フェーズごとの詳細度を決めています。
平成30年の改訂により、適用対象が受注者提案だけから発注者指定にまで拡げられました。
調べてみて感じたこと
疑問に思った事をメモしたけど調べきれなかった事です。どなたか教えてください。
日本で使うなら、概念以外は日本仕様へ全とっかえ位のカイゼンが必要かも
求ム!建築界の章夫さん